CROSS REVIEW

#10 2022年4月30日

ダンサー・振付家岩渕貞太+小児科医林亜揮子+詩人文月悠光

佚斎樗山 「天狗芸術論・猫の妙術」

松谷みよ子 「モモちゃんとアカネちゃんの本」シリーズ全巻

ペス山ポピー 「女の体をゆるすまで」

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クロスレビューとは?

深く広く楽しみたい。けれどコンテンツの沼は深すぎ、ネットは広大で、どうしても自分の慣れ親しんだジャンルばかり楽しんでしまう。そんな人に様々なジャンルを紹介していくオンライン番組です。
毎月、専門の異なる3名のレビュアーが、分野の異なる3つのコンテンツを共有し、3人で語りつくします。
1年で36のコンテンツと様々なレベルのレビューを紹介。新たな作品や表現との出会いこそ、人生を変えていく。そう信じる皆さん是非ご鑑賞ください。

司会・人選 = 西尾佳織

西尾佳織(にしお・かおり)
劇作家、演出家、鳥公園主宰。と、これまで名乗ってきたが、自分が劇作家なのか、演出家なのか、迷い始めている。1985年東京生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を務めてきたが、2020年より3人の演出家を鳥公園のアソシエイトアーティストとして迎え、自身は劇作・主宰業に専念する体制に移行。

今回のレビュアーは、振付家・ダンサーの岩渕貞太さん、小児科医の林亜揮子さん、詩人の文月悠光さんです。私はどんなクロスレビューが聞きたいだろう?と思ったときに、内外の声を深く聴かれているこの3名の方々が、ひとつの小さな舟を代わる代わる漕ぎ漕ぎ話すイメージが浮かびました。
林さんが挙げてくださったのは、児童文学作家の松谷みよ子による「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズ全巻。野菜やねこがおしゃべりするファンタジックな日々に、両親の離婚や親との死別といった出来事が地続きに織り込まれて、子供の世界のやわらかさ、不確かさに引き戻されます。文月さんからは、ペス山ポピーによるエッセイ漫画『女の体をゆるすまで』(女にじぶんとルビあり)。漫画家のアシスタント現場でセクハラ・パワハラを受けた経験と自身の性自認について、そしてそれらにまつわる葛藤を漫画として表現すること自体についての、漫画です。岩渕さんからは、江戸時代の武士で戯作者の佚斎樗山(いっさいちょざん)による武芸書『天狗芸術論・猫の妙術』。剣術家が天狗と古猫から「武芸」と「心術」(=芸術)について学ぶ「剣術の秘伝書」ですが、この本がそれぞれの専門とどのようにつながって読まれるのでしょうか?

岩渕貞太 (いわぶち・ていた)
玉川大学で演劇を専攻、平行して、日本舞踊と舞踏も学ぶ。2007年より2015年まで、故・室伏鴻の舞踏公演に出演、今日に及ぶ深い影響を受ける。2005年より、「身体の構造」「空間や音楽と身体の相互作用」に着目した作品を創りはじめる。2010年から、大谷能生や蓮沼執太などの音楽家と共に、身体と音楽の関係性をめぐる共同作業を公演。2012年、横浜ダンスコレクションEX2012にて、『Hetero』(共同振付:関かおり)が若手振付家のための在日フランス大使館賞受賞、フランス国立現代舞踊センター(CNDC)に滞在。自身のメソッドとして、舞踏や武術をベースに日本人の身体と感性を生かし、生物学・脳科学等からインスパイアされた表現方法論「網状身体」開発。玉川大学・桜美林大学非常勤講師。DaBYレジデンスアーティスト。
写真 = 野村佐紀子

林亜揮子 (はやし・あきこ)
1985年滋賀県生まれ。東京、神奈川で育ち、滋賀医科大学に進学、卒業後は神奈川で小児科医として働く。日本小児科学会専門医・指導医、日本血液学会専門医、日本小児血液・がん学会専門医。中・高時代は美術部、現在は主に鑑賞するのみだがクリエイティビティを忘れずにいたいと願う一市民。

文月悠光 (ふづき・ゆみ)
詩人。1991年北海道生まれ、東京在住。中学時代から雑誌に詩を投稿し始め、16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年のときに発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(ちくま文庫)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少18歳で受賞。そのほかの詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。エッセイ集に『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)がある。「ミヨシ石鹼」広告の詩、NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、詩作のオンライン講座を開くなど広く活動中。